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【vol.44】メディア化する商業施設

【vol.44】メディア化する商業施設/杉浦 幸「プロデュースする人」

表参道の冬の風物詩のイルミネーション。その先に今年2024年にオープンした商業施設の一つ、ハラカドがある。オープン直後には、「どう理解していいかわからない」と意見を求めらることが度々あった。それもそのはず、従来の売り場、物を陳列して売る店が極端に少ない。そして、誰もがタダでいられる公園のようなスペースがふんだんに広がっている。特に話題になったのが、公共料金が決められている銭湯である。

どれもとても採算が合いそうにない、、、従来の商業施設のスキームではとても理解し難い。


しかし、よく見てみると、銭湯にはスポンサーがついている。バスアメニティ、飲料、スポーツ、美容グッズなどのメーカーである。メーカーは通常、流通、小売というチャネルを通して消費者に商品を届けるので、商業施設では表に出ることは少ない。一方で、マスメディアを中心に一方方向の商品PRを流しているので、その効果測定は総量的である。

が、ここでは、銭湯という場を媒体として、利用者から直接、インタラクティブなマーケティングが可能である。


そういう目で見てみると、屋上庭園でブランドのPRイベントに誘われた人々や、広場にたむろする人々も情報の接点と考えれば、場の価値の考え方は全く違ってくる。皆、スマホを持っているので、データ収集として活用できる方法はいくらでもありそうだ。

場所をメデイアとして捉える発想である。

その発想の元では、商業施設のテナントは、店舗という形の小売事業者だけはなく、メーカーは例の如くで、ITサービス、コンテンツビジネス、旧来のメディアそのものも、、、と広がっていく。

ハラカドは特別な立地ゆえに成り立つと考えがちだが、果たしてそうだろうか?

今や人々は常にスマホを片手に何らかの情報を得ずに行動することもないし、情報を発信することはいたって日常的なことであり、ある程度の情報提供はかえってメリットがある仕組みになりつつある。

人々の行動基準が変わったことを真摯に捉えて、情報に関するリテラシーの変化を理解していくことが、これからの商業施設にも必要だと思う。人々が集ってこそ成り立つ不動産ビジネスであるからこそ、場の価値をあげていくことが求められ、そのリソースが情報にあるということを起点に考えていく必要があるだろう。


2025年、目指すは「メディア化」




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