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【vol. 22】不動産開発の「士農工商」

大手不動産会社から他社へと転職した若手から、「前職で商業ノウハウを身につけ、それを請われて華々しく転職したが、コロナ禍で商業ニーズに翳りが見えると、今度は職を追われて皆、散り散りになった」という、やや自虐的な話を聞いた。不動産業界内で、この数十年、上り調子だった商業開発の地位が、ここ数年で、下がってきてしまったという。あくまで、開発効率面での比較からの地位だと思うが、会社の中では、どの部署に属してるかは重要だろう。


今は昔20年前は、最大手の両M社とも、商業施設の専門部署はまだ、部ではなく、オフィスの片隅にパーテーションで区切られた一角の数人のグループだったと記憶している。先達の努力とマーケットの進捗により、今は事業部であり、役員がいるカテゴリーである。


確かに、長年、不動産業界を鑑みて、開発効率の序列というか、ヒエラルキーがあると思ってきた。それを私なりに理解するのに、「士農工商」に当てはめて、その時代の開発行為の優先順位を把握してきた。これが、時代の変遷によって、数十年単位で入れ替わってきている。

高度成長期には経済発展優先だから、まず、士=オフィス、労働人口を支える、農=住宅、工=国内工場、そして、足元の生活のための商、といった具合から、バブルを経て、豊かになると、オフィスはもちろん、レジャーとしての商が飛躍的に伸びてきた、一方、人口減に転化して都心に人口集中し、工場は海外生産に切り替わった。デジタル社会の到来で、オフィスのIT化はマストになったものの、ネットの普及とコロナ禍で、ECの需要の最大化により、流通倉庫=工が最優先、個人の生活の拡充=農、僅差で、管理に手間のかからないオフィス=士、そして、運営などに未だ、前時代的な方法で、人も金もかかる商業の歩が悪い、ということになる。

開発行為における効率もさることながら、商業における管理運営の効率化は業界全体の、ひいては、人口減社会全体の課題だと言える。

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