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「人々のための建築」ーデヴィッド・チッパーフィールド、プリツカー賞受賞!


3月8日、ニュースが飛び込んだ。私にとっては、あの、デヴィッドが!である。

30余年前、プロデュース業についたばかりの私は、デヴィッドの日本での初の大型案件プロジェクトの担当。

私の未熟さゆえに、出戻りや振り回したことも多く、それでも、彼は柔和な態度で受け入れてくれた。中でも、彼の子供の誕生日、クリスマスも働かせてしまったという苦い思い出が蘇る。。。



さて、受賞理由は曰く、

チッパーフィールド氏の設計に対する姿勢についてプリツカー賞の審査委員会は、「目立たないが変革をもたらす市民の存在や、公共領域の定義を民間プロジェクトであっても建築にもたらすこと。それを彼は無駄な動線を避け、トレンドや流行に左右されないといった姿勢を持って厳格に行ってきた。そうした姿勢はいずれも、我々の現代社会に向けた最も適切なメッセージといえる」と評した。


建築が、「作品ではなく、人々のためのもの」という本質を明らかにした、という点で、とても(私的にはものすごく!)象徴的だと思う。

概念としてわかっていても、やはり我が作品として存在を知らしめたい、という人間のサガは、もはや、社会として求められない、ということを明確に示した。すでに若い世代にとっては、環境問題など社会問題の捉え方は当然かもしれないが、一方で、SNSなどで情報発信の上手なライバー的な建築家に人気が集まる傾向がある。興味を惹きやすい情報と本質的な理解との間にはまだまだ危険性が孕んでる状況と言えよう。


デヴィッド曰く、

「この賞を受けることは、建築家が建築の本質とその意義だけでなく、気候変動や社会的不平等といった本質的な課題に取り組むことを促し続けるものだと捉えている。私たち建築家はビジョンと勇気を持って責任を果たせるよう、そうした課題に挑み、また次の世代を鼓舞しなければならない」


次の世代にどれほど伝わるか。未だ課題である。

デヴィッドと仕事をしていたあの若かりし頃、どれほど理解していたかは甚だ心許ないが、あの頃の私を振り返ると別の社会問題も思い出さずにはいられない。ただがむしゃらに、社会で認めらるには、人の(男性の)3倍は仕事をしなくては!と思っていた。。。奇しくも、3月8日は世界女性デー。今、どれほどの社会課題が解決されているのだろうか。。。





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